「カフェのように、心地いい部屋に住みたい……」
結婚7年目のふたりの理想は、意外にも同じだった。
ふたりで引っ越すのはこれで3回目である。どれも印象的な引っ越しだった。結婚を機に入居したマンションは、大家の都合で1年ほどで出ることになり、おしゃれなインテリアで整える予定が水の泡となった。そこから慌てて引っ越し場所を探し、築浅物件に6年。そして、今横浜から奈良への移住引っ越しである。
新婚時のあれこれは、こちらです。
そのため、家具や家電はそれぞれの寄せ集め。使用年数15年以上のものもあった。そこで引っ越しするにあたり、インテリアを見直そうと話し合った。
「カフェのように、心地いい部屋に住みたい……」
ふたりの理想が一致した。意見が合うことなんて、7年で数えるほどしかないぞ。これは…実現しなければ!!
ということで、ふたりはネットでインテリアを検索し始める。しかし、インテリアにまったく意識を向けていなかった私たちが簡単にシャレオツな部屋をつくることなんて無理無理。ググることに疲れた私は、このnoteをそっと夫に見せた。
ア「ココナラで、インテリアコーディネーターさんにお願いするのはどうかな?」
夫「いいやん。じゃ、いい人探して」
ふたつ返事でOK。これも結婚7年間で数えるほどしか…(以下略)。
ということで、ココナラの口コミを読み漁り、とうとう素敵なインテリアコーディネーターのSさんに依頼することができた。
しかし私たちは、不動産会社でつまづいた。
8月末、奈良の不動産会社の不手際が重なり、決まっていた物件をキャンセルすることになった。(こちらは、また次に書きます。)
そのため、インテリアコーディネーターのSさんとのやり取りはすべて白紙になる。Sさんは間取りをもとに家具を選定している途中だったそうだ。本当に申し訳ない気持ちになった。
それでも、Sさんのメールは優しかった。状況を察してくださりつつ、
”いずれにしてもせっかく頂いたご縁ですので、期間が多少伸びてしまっても最後までこちらにお任せ頂けると嬉しく思います。 ”
と仰ってくださった。
9月13日、「もうオンラインで物件を決めるなんて無理だ」とあきらめていたのだけれど、心地よいやりとりをしてくださる不動産会社さんに出会い、別の物件に決定した。
9月30日にやってきた新居。夫婦ふたりで部屋の間取りを測った。すぐに終わると思っていたのに一時間以上かかった。3LDKのデザイナーズ物件で、天井の高さが全部違う。なんか変なでっぱりがある。慣れないメジャーに夫が指を切る。「いきなり離すなよ!」と、怒られる。すみません。
ふたりは引っ越しで疲労困憊。もうカフェっぽいインテリアについてはいったん脇に置いて、何もないリビングに寝っ転がった。
その時に思ったこと。
(私たちには、Sさんがいるじゃあないか。顔もわからない、どこに住んでいるかも知らないインテリアコーディネーターのSさん。きっと、私たちが穏やかに暮らせるインテリアを提案してくれるだろう。うん、引っ越しは大変だけど、それを楽しみにがんばろう。)
Sさんは、奈良移住にかかせない人になっていた。
そんなSさんは、やっぱり売れっ子らしい。海外出張中でまだインテリア案は来ていない。
”現在ラフレイアウトプランとそれに伴う図面修正を行っている段階ですので、ご提供までもうしばらくお日にちがかかりそうです。 ご猶予を頂けているかとは思いますが出来るだけ早い提供に努めます。11月初旬にはお渡しできるよう頑張ります!”
そのメールを夫に見せると、「うん、わかった」と明るい顔をした。わたしたちはいま、超ミニマリスト的な部屋で静かに暮らしている。
(記:池田アユリ)